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『蛍袋』

 名前の由来は、子どもたちがつかまえた蛍を入れ光らせて遊んだからとか、花の形を提灯にたとえ、昔の提灯の呼び名である「火垂る」を用いたからなどと言われています。
 林のふちや道端に淡い紅紫の蛍袋がちょうちんを下げるのは、梅雨空の頃です。
雨に濡れるアジサイは梅雨時の風物詩ですが、同じ雨の季節の花でも、蛍袋にはアジサイとはひと味違うけなげさが漂っています。
 蛍袋の花を摘むと雨が降ると言われ、別名「雨降り花」とも呼ばれます。
地方によっては「つりがねそう」「とうろうばな」「ちょうちんばな」といった愛称で親しまれているそうです。
ユニークな形の花が重そうに垂れる様子は、道行く人の想像力をかきたてるのでしょうね。
 梅雨の晴れ間をぬって、夜空に舞い上がる蛍を追いかける子どもたち。つかまえた蛍をそっと蛍袋の花筒に入れ、ほのかな蛍光を放つ袋を宝石のように両手で包み、いつまでも飽きることなく見詰めていたのでしょうか。
 かつての子どもはすっかり大人になり、蛍を追いかけることもなくなりました。
けれど、路傍に咲く蛍袋を見ると懐かしい気持ちになりますね。
花とは、人の心に挟まれたしおりのようなものなのかもしれません。

宵月を 螢袋の 花で指す (中村草田男)

 

 

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