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『一初(いちはつ)』

 初夏に咲くアヤメ類のなかで一番早くに咲き出すことからついた名が「一初」。なんとも風情ある美しい名前を持つこの花は万葉集にも詠まれており、古くから親しまれてきた花です。
 一初、文目(あやめ)、杜若(かきつばた)、菖蒲(しょうぶ)……。
アヤメ科の花はどれもよく似ています。さらにジャーマンアイリスなどが加われば見た目で区別するのはなかなか難しいのですが、一初は葉っぱの横幅が広く、花から鶏のトサカのような白いもじゃもじゃが出ているのが特徴です。また、生えている場所も見わける目安になるでしょう。杜若や菖蒲などは湿地に生えますが、一初や文目は乾いた土で育ちます。

 その昔、かやぶき屋根の棟に一初を植えたそうです。魔除けの意味もありましたが、本来は屋根の補強に役立てたのだとか。一初は乾いた土に生えるので乾燥に強く、棟にたくさん植えることで屋根を締め付けて大風や火災などから家を守ったのです。 「いずれあやめか杜若」と美人の形容詞にもなっている杜若によく似た白や紫の優美な花と、水のないところに育つ力強さ。このギャップが一初の魅力なのかもしれません。

 

 

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